「ほっともっと」と幕の内弁当シーンについて俺の意見

ほっかほっか亭」から「ほっともっと」が分裂・独立してから、早4年。

といきなり書いたって、何のことだか分からない人も多いと思うが、経緯を説明すると、「ほっかほっか亭」という全国的な弁当チェーン店は、主に「ハークスレイ」「プレナス」という2つの会社が、「ほっかほっか亭総本部」から経営権を借りて、フランチャイズ経営していた。
が、2008年。プレナスと総本部との関係が悪化し、プレナスが経営していたほっかほっか亭全てが、ほっかほっか亭総本部から独立! 独自ブランドとして「ほっともっと」を立ち上げた。

だから今は全国には「ほっともっと」と「ほっかほっか亭」の2つとなり、それぞれ別の道を歩んでいる

近所の「ほっかほっか亭」のメニューで、自分が好きだったのは「デラックス弁当」であった。いわゆる幕の内弁当のデラックス版だ。

「デラックス弁当」は、ほっともっとになってからのこの4年間も、しぶとくラインナップされていたが、元は「ほっかほっか亭」のメニューである。故にほっかほっか亭総本店がレシピを作っている。地域ごとにある程度仕入れ元は決まってるだろうから、同じ地域だったら、違う店舗でもそれほど味にブレがないはずだ。

それが「ほっともっと」になってから、徐々に味が変わっていったのだ。当たり前だろうけど… 良くなったわけでも悪くなった分けでもないが、とにかく変わった。焼肉がすき焼きっぽい味付けに変わったのが一番大きな変化のように思える。
「ほっともっと」のデラックス弁当と「ほっかほっか亭」のデラックス弁当は、ルーツは同じだが、4年という月日を経て、もう別物になっていると言える。

食べ比べをしようと思っていた矢先、「ほっともっと」は新展開で攻めてきた。「松・竹・梅」の3段階で(今は「花」も加えた4段階)出してきた幕の内弁当である。

松・幕の内は680円
2042

竹・幕の内は490円
1932

梅・幕の内は430円
1931

花・幕の内は450円
2023

ほっともっとの幕の内ラインナップは、とてもよく考えられている。
松竹梅の価格設定が、まず680円、490円、430円、というのがニクい。ニクすぎる。真ん中の「竹」が500円台じゃないんだぜ。じゃあ、「松」と「竹」は何が違うのかよ?というと、細かいおかずが違うが、「松」にはエビフライ、ボリューミーなすきやき、明太子がある。この3つは人を幸せにするおかずだ。このクオリティなら、旅行先の駅弁として並んでいても、俺なら大満足で食べてしまいそうだ。愛しくてたまらない弁当である。しかし、「松」ほどゴージャスじゃない「竹」では幸せになれないか?と言うと、そんなことはない。充分すぎるほど充実した内容なのだ。「えっ?これで490円は安すぎない?」と思ってしまうだろう。そして廉価な「梅」ですら、手抜きはない。鮭はもう無いが、430円でこれだけの内容があれば怒る人はおそらくいない。「花」はちょっと外伝的な存在で、完全に女性ターゲットの商品だ。カロリー明記、ミニデザート付き、丸くて可愛いトレイなど、女性が喜ぶ要素満載の弁当だ。俺は食べない。

この「ほっともっと」の松竹梅の幕の内弁当が、実に素晴らしい。味、価格もさることながら、デラックス弁当時代は結構待たされたが、松竹梅幕の内はどれも出て来るのが早い!! どういうカラクリか分からないが、マックかと思ってしまうほど、すぐに出て来る。かといって作り置き感はそれほど無い。エビフライはたまに…と言いたくなるが許容範囲だ。俺は通常は迷わず「松」をオーダーするようにしている。680円、ほっともっとの中ではハイエンド商品であるが、内容は満ちている。高すぎないギリギリの価格が絶妙だ。もうデラックス弁当は必要無い、とまで思った。あれだけ好きだったデラックス弁当に別れを告げられたのも、この「松・幕の内」のおかげである。

デラックス弁当とは、こういうやつだ。

ほっともっと版のデラックス弁当 550円
2016

ほっかほっか亭版のデラックス弁当 590円
120501delaxbento244

どうだろう。ぱっと見、同じレシピであることが分かるだろうか。

しかしこの7月、「松竹梅 幕の内」が好評なのか、ほっともっとは遂に「デラックス弁当」をディスコンにした。当然の流れである。

が、ほっかほっか亭では、まだラインナップし続けている。まだまだ「デラックス弁当」を売るつもりなのだ。まあ、「デラックス弁当」を食べたければほっかほっか亭を探してそこに行けば食える、とも言える。

でも、ほっともっとの「松竹梅 幕の内」に太刀打ち出来るとは到底思えない。

それをほっかほっか亭も自認しているのか、ほっかほっか亭なりのハイエンドメニューを用意してきた。それがこれだ。

ちりめん御膳 590円
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うなぎ御膳 1180円
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それぞれ「ちりめん」「うなぎ」とテーマがあるため、幕の内では無いので、デラックス弁当に変わる上位概念では無いとも言えるが、「御膳」という言葉を付けるというのは「これはハイエンドですよ」という意思表明でもある。

ご‐ぜん【御膳】
1 食膳・食事を丁寧にいう語。御飯。
天皇や貴人の食事。
「隆方陪膳つとめて候ひければ、―にもえ着かせおはしまさざりけり」〈著聞集・三〉
3 (接頭語的に用いて)飲食物を表す語の上に付いて、最上等なものである意を添える。「―そば」

提供元:「デジタル大辞泉」

天皇の食事だぞ。最上等だぞ。いいのかそれで!

だが、「どうしても今、ちりめんが食べたい」「どうしてもうなぎが食べたい」っていう気分の時以外は、敢えてチョイスするかな? 「うなぎ御膳」は1000円オーバーなので外すとしても、「ちりめん御膳」ならば、天ぷらも入ってる。どちらかというと俺なら、ちりめんより天ぷらが食べたいから「ちりめん御膳」をオーダーしそうだ。そういう人多いんじゃないか?って気がする。じゃあ、天ぷら御膳にするか、デラックス弁当の上位概念としてのハイクラス幕の内弁当として出した方がいいんじゃないの? なんて思ってしまう。
ほっともっとの「松竹梅 幕の内」と比べると、どうにも存在感が弱い。

幕の内弁当を食べたい人(=自分)というのは、「お弁当のおかずは、おまかせ! 何か適当に、良い感じのおかずを集めて作ってよ」と、作り手に完全に委ねているのだ。もちろん、ある程度中身の写真を見てオーダーするけれど。

だって、幕の内弁当って、オールジャンル、オールミックス。お店によって全然違うわけですよ。まんべんなく、おかずを入れる。だから、幕の内が美味いお店は、どのメニューを食べても美味いというのは間違いない。幕の内はショーケースでもあるのだ。

だからこそ、ほっかほっか亭には、幕の内弁当を本格的にテコ入れして欲しいな、と思う次第である。