ぼくと台湾 (長文)

数日前の日記などでなぜ台湾からお客さんが来ているのか?について、長~い経緯などを!

初めて台湾に行ったのは2005年の年末。なぜ突然行こうと思ったかというのは、雑多な食べ物が美味しそうだったから。ホントにそれだけ。当時何も知らなくて、ホテルの予約すらせず、一人で飛び込んだ初めての「海外」は超・刺激的だった。その時は純粋に観光だけを楽しんだ。
今でこそ、台湾の友達は大勢いるのだけど、その時はまだ誰もいなくて。

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当時の写真。観光ならここ(中正紀念堂)、行くでしょ

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当時の写真。ここも(台北101)行くでしょ

帰ってからはしばらく虜になったかのように、台湾のことについて歴史から音楽からサブカルチャーまで色々と調べ始めた。隣の国について、あまりに知らなさすぎた。むしろ、ほとんどの日本人は僕と同じで、そんなに知らずに生きている。台湾は中国の一部なの? 中華民国と台湾って違うの? ちょっと複雑な国家関係故、ぼんやりとしてしまう。何せ、日本とは国交が無いのだ。
そして日本の文化はすごい速度で向こうに流れていくが、向こうの文化はほとんど日本に入ってこない。日本で目にする台湾は、PC関連商品ばかりだ…

その頃はMySpaceがまだ流行っていた頃で、僕は自分の音楽(カラテクノ)のMySpaceを運営していた。外人さんのウケがよく、あっという間にFriendsが1000人を超えた。そして色んな国のアーティストの音楽、それもアーティスト本人がアップロードした音源を無料で聴きまくった。あの頃はMySpaceが最高に楽しかったw
その中に、ひときわ異彩を放ちつつも独自のスタイルやグルーヴが感じられて、格好よいな、と思った音楽があった。中国語ラップに、中華風(?)の楽器の音でのヒップホップ。今まで聴いたことのない音。台湾の人達。何だこれは!格好いい!と思い、そのページに「格好いいよ!この前台湾行ったよ!」ってメッセージを送った。その音楽こそが、拷秋勤(コウチョウチン)だった。

すぐに返事が(英文で)返ってきて、自己紹介をし合ったりして、何度かやりとりしているうちにいつしかMSNチャットに移り、いつの間にか毎晩チャットをするようになった。もちろん相手は拷秋勤のファンチャン君である。2006年くらい。最初の頃は歴史や文化のこととか、割とカタい話が多かった気がする。

拷秋勤がどういうスタイルで、何をラップしているのかを色々教えてもらった。台湾という国が背景にあって、そしてこうだ、という流れが理解出来て、とてもリアルなヒップホップをそこに感じた。

そして次の年の夏、メンバー揃ってサマソニのために来日する(見に来る)というので、ライブをしないか?と誘い、イベントをセッティングした。代々木のライブハウス、Laboである。彼らと初めて会った場所は日本の、代々木Laboの前の歩道。ライブは、当然ラップの内容は分からないけれど、格好良かったし面白かった。何よりトラックが格好よかった。遊びに来た僕の友達も皆、彼らの音楽で盛り上がった。

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当時の写真。代々木Laboにて。わ、若いぞ

「次は台北で会おう」みたいな事を言って別れて、その年の秋に2度目の台湾に行き、本当に台北で会った!
不思議と、「あ、本当に台湾の人だったんだ」と思ったのを覚えている。当たり前だけど。
現地の人のみぞ知る美味い店やおもしろスポットにいっぱい連れてってもらった。その時は沖縄のクルーとJ-POPイベント「アラケモ。」を台湾の地下社会というハコで、拷秋勤らと一緒に開催したのだった。あいにくの大型台風が来て大変だったが…

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当時の写真。ライブハウス「地下社会」の前では台風で大木がひっくり返って、ユンボ出動中の様子

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アラケモクルー+拷秋勤クルー。たくさんのお客さんが来てくれて盛り上がった

その後も一緒にイベントを開催したり出たり(おもしろ三国志さんと一緒に行ったりとか、Asohgiさんと野外フェスに出たりとか)、こちらに来た時にもまたイベントやったり(スピキン09とか、アシパンのイベントとか)、音楽を軸にして色々と遊んだ。いつの間にか最初の頃みたいなカタめの話はほとんどしなくなり、バカ話ばっかりになったw 僕は台湾にもたくさんの友達が出来たし、彼らも日本でたくさん友達が出来ただろう。向こうに行くたびに宴、こっちに来たら宴、って感じでどんどん輪が広がっていったから。

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2009年、SPEEDKIN09 at 渋谷アマテラグジーにて拷秋勤ライブ

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おもしろ三国志ライブ at 台北・地下社会

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Asohgi at 巨獸搖滾音樂祭 in 台湾大学

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宴 at 台北 いつの間にか大勢。乎乾啦!

拷秋勤の音楽的な良さもさることながら、ファンチャン君とは不思議とウマが合った。言葉が違うのに超不思議だけども、笑いのセンスやテンポ、グルメやサブカルや毒っ気やクドさも含めてウマが合ってしまった。
多分、今まで出会った外国人の中で間違い無く、一番面白い。(「あ、そういえばこの人外国人だったのか」とたまに思ったりするほどw)

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面白い

それから今まで、台湾のことの多くはファンチャンフィルターを通して僕に入って来ている。最初に一人で行った時と比べると、多くの事を知って、理解できたように思う。まだまだ神秘は多いけれど。

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いまだに寺の門などにLED掲示板があるのは謎だったりする

そして2011年になり、日本人が近年で最も台湾を意識する出来事が起こる。
3月に東日本大震災が起こり、その後世界中から日本に対してお祈りのメッセージと共に、多くの義援金が集められたことは周知の事実だが、台湾という国からの金額がどの国よりも飛び抜けて大きかったのだ。

日本のテレビではそのことがあまり放映されていないだのと言われていたが、それはともかく、その事実に驚いた日本人は数多くいたはずで、感謝の気持ちと共に、台湾ってどんなとこ?そこにいる人はどんな人?と興味を持った日本人も多くいたはず。

金額の大小を感情の大小として比較するのはナンセンスであるが、これは紛れもなく台湾の人々の純粋な気持ちの結晶である。全国民レベルでの優しい気持ちが海を越えて伝わってくるというのは本当に素晴らしい。

ファンチャン君は2011年の4月に、地震以前から日本に遊びに来る予定でいた。原発が爆発したりといった数々のパニックで、外国からの観光客がぱったりと来なくなった時期だ。日本にいた外国人も皆、国に帰ってしまった。そんな中、キャンセル客が大量に出てガラガラになった飛行機に乗って、予定通り、ファンチャン君とその友達のサミュエル君が遊びに来た。台湾は勿論諸外国では、根拠のない過剰報道も加熱していた。東京のビルが倒壊とか… それで行く前に「日本危ないから行くのやめとけよ…」と友達からアドバイスを受けたりしたそうだ。それでも予定通り来てくれた。

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来たぜ!at 靖国神社 花見は自粛だった

台湾の赤十字じゃなくて日本で直接募金したい、と言って、周りの友達から募金を募って、そのお金を直接持ってきてくれた。台湾からの200億円の義援金は凄いが、草の根レベルでそれが最もリアルに感じられた出来事であった。人々の暖かい感情は本物だったのだと。

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あの時、近所の公園や、皇居や北の丸公園では桜が満開で、例年と同じような「綺麗な日本」をカメラに多く収め、「東京は壊滅してる」と思っている台湾の人々に対して「そんなことはない!東京は平和で桜は綺麗だ」という写真をFacebookで即座に公開してたくさん「いいね!」が付いていたのも見た。

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去年3月の桜

台湾には昔ながらのパソコン通信みたいな「PTT BBS」というのがあり、いわば2ちゃんねる的な、台湾人だけが夜な夜な楽しむサービスがあるのだが、そのログイン画面ですら「日本に祈ろう」とAAになっていたのも見た。

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これ。普段はもっと派手で馬鹿チープな感じである

彼らが帰国してからも、台湾のちょっとした街角の電柱などに、日本がんばれ、みたいなことが書かれ手書きのポスターがいくつも貼ってあったりしたようで、その画像も見た。

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こういうの…

なので、あの200億円というのは紛れもない「本物」で、台湾の人の一人一人がかなりミクロなレベルで、「気持ち」が入ってるのだと確信したのだった。

東北地方はまだまだ復興が必要だけど、元気になったら、日本に台湾(のみならず、世界中)の皆さんを招待してあげるのが日本流のおもてなしだと思う。

地震から1年が経ち、記憶を整理するような気持ちで書いてみた。忘れることは無いだろう。

(その後)
相変わらずファンチャン君とは馬鹿話ばかりしていますが、音楽もちゃんとやってますw
彼らのフルアルバムの前作にも、僕は1曲リミックスを提供したのですが、この夏に出る新しいアルバムにも、1曲リミックスさせてもらっています。
また前作のリミックスとは全然違うタイプの曲で、自分自身のチャレンジングな部分と、楽曲としてのクオリティをブラッシュアップするのに心血注ぎました。色んな人に手伝ってもらったりもしました。結果的に、彼らクルー関係者にはかねがね好評で、ほっと胸をなで下ろしています。凄く嬉しい。今からリリースが待ち遠しい!
ちょっとサウンドを聴かせてもらったけど、新たにプロデューサーを迎え、音のクオリティが凄いことになっていました。世界レベルで勝負できる作品だと思いますよ。そこに参加させてもらうのはまさにプレッシャー。でも凄く嬉しい!

MySpaceのメッセージから、ここまで広がるとは。僕にとってのMySpaceは最高の出会いを提供してくれたと思います。

そのリミックスの提出を終えて、今回のMJ-spiritのステージに合わせた訪日に繋がるわけです。はっきり言って、日台・宴合戦みたいな感じになってきてます。負けてられない!