最近のクラブの現場での映像周りの話

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クラブやライブハウスで映像を出すパフォーマンスを始めて12年。
この10年で映像をとりまく環境は大きく変わった。
そして相変わらず映像周りは、端子の種類と、ケーブルの長さが面倒臭い

でも、音がメインのクラブやライブハウスの現場において、映像がしっかり語られることは多くない。

僕みたいに音と映像を同時に出すようなライブPAパフォーマンスをやる人というのは今でも少数派だけど、映像も音と同じくらい重要だと思ってるので、ちょっと最近の事情を書いてみたい。

音に関しては、いくらPCDJが普及したり、CDJもDJミキサーもデジタル出力を出せるようになったとしても、フルデジタルでパワーアンプ直前まで持ってくるようなハコは稀で、ほとんどの現場ではミキサー前後でアナログに変換されていることが多く、そこにはだいたいRCAケーブルか標準ピンケーブル、もしくはバランスのXLRケーブルが介在しており、そこは10年どころか30年は変わっていない(はず)。
それで十分で、その方が断然便利だからだ。

これが映像になったら話が変わってくる。
クラブやライブハウスで映像を出す場合、ほとんどのハコではハコに設置された液晶プロジェクターを利用することになる。
10年前だとまだ最大解像度も高くなくて、800 x 600だったりが上限であることが多く、明るさ(ANSIルーメン)も暗いものが多かったりと、クラブに設置してあるプロジェクタ自体の性能が今より随分控えめであった。(ライブハウスにはプロジェクタ自体が無いことが多かった)
出す方もRCAピンケーブルで、640 x 480のVGAサイズで映像を出力していれば、まずまず良かった。

しかし近年になってプロジェクターの性能が上り、より大画面で鮮明な画質が映せるようになると、出力する方もそれなりの画質で映像を送信したい

640 x 480でRCAピンケーブルなコンポジット出力なんかをすると、残酷にも劣化したボヤボヤな画質が目立ってしまう。

ハコ側も昔みたいに「映像はビデオ端子でください~」と言っておけば問題なし!ということも無くなってしまった。

では、高画質のためには、どのような信号をどれくらいの解像度で送れば良いのか?

ハコによって異なるが、まず4:3の画面なのか16:9の画面なのか、から始まる。それぞれ解像度が違うため、映像出力する側での確認が必要となる。

4:3の映像を16:9に出せないことは無いけど、スクリーン左右に無駄な余白ができてしまう。

16:9のスクリーンに、ビシっとHD画質で映すには、それなりの出力が必要だ。

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そういった高画質環境だと、HDMI端子を使うのがベストだ。信号劣化の無い理想的なデジタル転送である。

そもそも、そういう超高画質を誇るハコは、HDMIケーブルかRGBケーブルが映像を出力する場所まで延ばされてきていることが多いと思う。

もう一つの高画質端子といえば

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D-sub 15ピン RGB端子である。この端子を装備していないプロジェクターはまず無い。

呼ばれ方としては「RGBケーブル」が主流で、「15ピン」などと呼ばれることもある。

これはHDMIと違ってアナログ転送なので、長さが長くなればなるほど画質が悪化する。あまり長いケーブルだと色みがくすんだり、輪郭が微妙にぼやけたり、ノイズが乗ったりすることがあるが、それでもコンポジットのRCAピンケーブルより断然良い。

クラブなどのハコでは、映像を出す場所とプロジェクターの場所が大きく離れていることが多い。
プロジェクターは天井に設置されている場合も多く、脚立が無いとプロジェクターに触れないようなことも多い。脚立レベルでは無理という場所に設置されていることすらある。

「映像はだいたいコンポジットのビデオケーブルだろうから…」とハコが判断して、天井のプロジェクターから黄色いビデオケーブルが巧妙な綺麗さで引っ張られてきている場合、「RGBの方が画質が良いから差し替えてください」とはなかなか言えない。這わせるの大変だし。
そういう場合もよくある。

ここから先は妥協点であるので、できれば避けたいが

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S映像端子もプロジェクターに使える。S-VHSビデオが普及した時に同時に出てきた規格で、輝度と色を分けてるから、普通のコンポジットより高画質というアナログ規格だ。

呼ばれ方は「S端子」「Sケーブル」など。
マイナーなのかクラブの現場ではあまり使われてないように思う。

そして最低限なのが

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コンポジットなビデオ端子である。よく見るあれだ。
これは呼び方が数多く、「ピンケーブル」「RCAケーブル」「黄色いやつ」「コンポジ」「ビデオケーブル」「普通の」「AVケーブル」などと呼ばれる。

最もシンプルかつ最も画質が良くない方式なので、イージーであるが、もう少し画質に気を配りたいと思っている人は、このケーブルも非常用として最低限用意しつつ、上位ケーブルも準備しておくと良いだろう。

他、家庭用で普及した「D端子」や、PCのデジタル接続である「DVI」などは、クラブやライブハウスのプロジェクター投影用で使われることはまず無い。

ハコ側、アーティスト(VJ)側で、お互いに高画質を追求する場合、

・ハコ側は、プロジェクターからのRGBケーブル(もしくは、HDMIケーブル)を、ステージ上とVJブースの両方に伸ばして来て欲しい
・アーティスト(VJ)側はRGB出力できる機器とRGBを活かせる解像度のソース(16:9と4:3のどちらも用意するのがベスト)を用意し、適当な長さのRGBケーブルと、RGBメスメス端子(RGBケーブルを延長するためのコネクタ)を持っていく (もしくは、そのHDMI版も)

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のが、理想だろうな。

そうとはいかない場合も多いので、アーティストはコンポジットでビデオ出力できる環境(PCの場合はスキャンコンバータなど)と、適当な長さのRCAピンケーブルと、RCAのメスメス端子の準備までしていれば、画質はボヤけるが映せないことはない。

そうやって持っていくケーブル類が増えていくのと、リハーサル時のプロジェクターとの接続作業と、場合によってはプロジェクターから這わせる作業、VJとの兼ね合いで端子が埋まってるからどうするか…など、映像周りの面倒臭さとは今後も長い付き合いになりそうである。