J-POP DJのメモ vol.6 ~ミックス編~

J-POP DJのメモ vol.6 ~ミックス編~

こんにちは、BUBBLE-Bです。J-POP DJについて思うところをメモするシリーズもこれが最終回となりました。
今回はいよいよ現場でのミックスについてのメモです。やっと現場でのDJ話ですね。このままDJの話にならず準備だけで終わると、延々と柔道ばかりして野球のシーンが無い実写版ドカベンのようになるところでした。

バックナンバー
J-POP DJのメモvol.1~そもそも編~
J-POP DJのメモvol.2~ジャンル編~
J-POP DJのメモvol.3~選曲編~
J-POP DJのメモvol.4~機材編~
J-POP DJのメモvol.5~ライブラリ編~

そもそもJ-POPはDJ向きに作られていない

いきなりの否定から入りましたが、そうなんです。J-POPはDJ向きに作られていません。DJユースでは無いんです。これはどういうことでしょう。

DJ向きに作られた曲とはどんな曲か?と言うと、ハウスやテクノだとイントロとアウトロにそれぞれリズムだけの「のりしろ」部分があって、そこで次の曲をミックスしていく曲だったりします。
また、キックの音が強くて前に出ているとか、歌はあくまでも曲のパーツの一つ、のような特徴もあります。

対してJ-POPはといえば、頭に「のりしろ」のような部分はありません。(たまたまある曲もありますが)
そしてキックの音が強く出ていることは少ないです。EDMやテクノのアレンジであればある程度はそうなってますが、普通はそんなことはありません。
そしてやはり、歌がメインのジャンルです。そりゃ、ポップスなので当たり前ですね。それも、Aメロ・Bメロ・サビという黄金の構成です。

そんな音楽で無理矢理DJをするのだから、J-POPなりのミックスメソッドがあると思います。

1コーラスと2コーラスの間で勝敗が決まる

J-POP DJでは1コーラスだけをかけて、2コーラスまでの間に次の曲に移るというミックスをすることが多いです。
つまり、1コーラスのサビまで聴いて盛り上がっから、もうおしまい、はい次、という展開です。
そして、Aメロ、Bメロ、サビの途中で次の曲に行くというのは不完全燃焼な感じがするので御法度です。

そういう心持ちでミックスをするのであれば、1コーラスと2コーラスの間にある「間奏」の部分でうまくミックスすることになります。しかしながらこの間奏というやつは、曲によって様々なパターン、そして長さがあるんです。

多いのは8小節くらいのパターンで、コード進行が一巡か二巡したら2コーラスといった感じです。こういうのは分かりやすくミックスできます。
しかし、曲によっては2小節しかない、下手すりゃ1小節しかないという場合もあったりします。
例えばCHAGE and ASKAの「僕はMusic」は1小節しかありません。この1小節を逃すと、すぐに2コーラス目のAメロが始まってしまいます。

なので、曲によって間奏がどれくらいの長さがあるかを把握しておくのが良いでしょう。
頭で覚えられないのであれば、TRAKTORやSerato上で、2コーラスが始まる直前にあらかじめCUEポイントを打っておくのもおすすめです。
また、ある程度慣れてくると、波形を見て「ここから間奏で、ここから2コーラス目か」と分かるようにもなります。

何にせよ、1コーラスでミックスするのであれば、間奏は勝負タイムです。どこで繋ぐのか、そしてどのように繋ぐのか、スキルが最も問われる所です。

次の曲のイントロのパターンを知ってCUEを打つ

間奏で次に繋ごうとしている曲はどんな曲か? そしてその曲はどんな始まり方をするか?
J-POP DJがミックス時に考えているのはこれです。

J-POPの曲のイントロは様々な始まり方をします。大雑把に分けるとこんな感じでしょう。

・ほぼリズムの音だけで始まる
・リズムのキックが無い、上物だけの部分から始まる
・印象的なイントロメロディが始まる
・いきなり歌が始まる

他にも色んなパターンがあると思いますけども。
今かけている曲と次にかけようとする曲が、パズルのようにピタっとハマった時が、良いミックスだと言えます。

そして、どこからミックスを始めるか?を決めて、CUEを打ちます。

例えばロックな生ドラムの曲から、また生ドラムの曲に移るとしましょう。
次の曲の頭2小節がハイハットを刻む音だけで、3小節目の頭からドンとリズムが入ってくる場合、2小節のハイハットだけの部分ってミックスには正直邪魔ですよね。
そういう場合は3小節の頭の部分にCUEを打つ、みたいな感じです。そうすることで、リズムが抜けずにグルーヴが継続します。

この場合だとミックスはまだ簡単な方ですが、例えばハイハットだけの部分の2小節目からボーカルが「イェアーーーーー!」と叫び始め、それがリズムの入った3小節目になってもまだ「アーーーーー」の部分が乗っていたらどうしましょう?

3小節目の頭からミックスを始めると、そのイキったボーカルの「アーーーー」の部分の途中から入ってしまうことになり、不自然ですよね。そういう曲の場合、涙を飲んで1小節目のハイハットだけの部分の頭からミックスをする方が無難でしょう。
「いらんことするな」とムカつきますけど、そういう曲なので仕方ないんです。

こういった感じで、そう簡単にパズルは合ってくれません。
だから、この曲はどんなパターンで始まるのか?を知ること、そして今鳴っている曲の間奏部分はどのような感じか?を知ることが、良いミックスの手がかりとなります。なかなか深い、泥沼の世界です。

弱起を制す者がカットインを制す

「弱起」という言葉は音楽理論用語で、旋律が小節の頭から始まるのではなく、前の小節から始まったりする場合のことを言います。
J-POP DJでカットインなミックスをする場合、弱起を制するものがカットインを制すると言っても差し支えないほど、テクニック上重要なポイントです。

弱起を無視してカットインをすると、今の曲の2コーラス目の歌い出しが一瞬乗ったりして、ダサいことになるんですよね。

では、弱起のある曲とはどんな曲でしょうか?

パッと思いついた物では、Kinki Kids「硝子の少年」とか。
これは1コーラス目は「雨が踊るバス・ストップ」という所から始まりますよね。

これを小節として整理すると

|イントロ(4つ打ちリズムとピアノリフだけ)| ×7
|ドン (休符1拍) チャンチャンチャン(イントロメロディの弱起)|
|メロディ乗せのイントロ| ×7
|(休符1拍) 「あ め が」|

という構成となってます。
この中では「あ め が」の部分が、前の小節の2拍目から始まっているため、弱起となっています。

硝子の少年は間奏もイントロと同じ構成をしており、2コーラス目の頭の「映画館の椅子で」の部分の「え い が」は弱起となっているわけです。

硝子の少年のイントロはハウスチックで4つ打ち+ピアノリフといったアレンジなので、何かの曲から硝子の少年に繋ぐことは割と簡単なのですけど、実は抜け出すことが異様に難しい曲なのですね。それは上述の2コーラス目の弱起のせいです。

こういった弱起曲から抜け出すためには、間奏は7小節で終わり、8小節目の頭は休符で、2拍目から「え い が」の「え」が入っているな、というのを把握し、事前に手を打ちます。

それがどんな手かと言えば、次の曲は1小節まるごとフィルインから始まる曲にするとか、1小節まるごと弱起のボーカルから始まる曲にすることで、硝子の少年から抜け出すことができるわけです。まさにパズルですね。

たとえばフィルインが1小節まるごとある曲だと、trf「Overnight Sensation」とか。
フィルインじゃなくて、リバースシンバル的なSEが弱起的に入ってる曲を持ってくる手もアリです。乃木坂46「制服のマネキン」とかですかね。

このように大胆な弱起の曲もあれば、例えば槇原敬之の「もう恋なんてしない」のように、「君がいないと何にも」の最初の「君」だけが弱起で、それは4拍半目から始まるという、短い弱起もあります。

「もう恋なんてしない」の2コーラス目は「2本並んだ歯ブラシの」で、「にほ」が弱起ですよね。
この「にほ」が残らないように、次に繋ぐ曲も弱起曲を持ってくるのがベストです。

どうしてもダメな場合は、ディレィをかけておとを伸ばし、弱起部分を無理矢理カットしてしまいましょう。

ロングミックスは難易度が高い

テクノやハウスのように、延々と16小節、32小節とロングミックスをしたい。そういう想いを持つDJもいます。
が、残念ながらJ-POPは「のりしろ」も無いし、そんなに長い小節が展開もせずに続くことはほとんどありません。

それでもロングミックスをしたい場合は、今鳴っている曲にループを設定し、ずっと鳴らし続けるのが無難でしょう。
ずっとループさせて、フィルターやEQで徐々に低域をカットし、ディレイでもかけたりすれば、テクノやハウスっぽくミックスすることが出来ます。

ただこれは、ミックスする曲のどちらかが「リズムだけのような部分」の場合においてのみ綺麗にミックスできるもので、両方とも何か楽器の音が鳴っている場合、音が混ざりすぎて汚くなります。

さらに曲同士のルート(キー)が合ってない場合などは、こういったロングミックスはやらない方がよいと思います。
例えば、今鳴っている曲のルートはCだけど、次の曲のルートはBだった場合、それらを混ぜると不協和音だらけのミックスになります。こういうミックスをすると不快な音をバラまくことになり、「やりたい事は分かるけど実力が付いてきてない残念なDJだな」と思われるので、そもそも必要のないロングミックスはやめましょう。

1コーラスで次の曲に行くことの是非

多くのJ-POP DJ、そしてアニソンDJは、1コーラスをかけたら次の曲に移るというクイックなミックスをします。
アニソンDJの場合、テレビで流れるのは1コーラス分だけで、当然みんなが知ってて歌えるのは1コーラスだけだから、という理由があったりします。J-POPも似たような理由かも知れません。
なので、フルでかけると「長い」と思われたりしてダレることがあります。

個人的には、フルコーラスをかけたいと思う派です。
それは、歌詞のある楽曲は2コーラスの最後まで聴くことで歌詞が完結したりとか、最後に歌詞のオチがあったりすることがあることや、2コーラス目が終わってからエモいギターソロが入ってきたりして、それをスルーするのは何とも勿体ないな、と思うからであります。
何でもかんでも1コーラスだけでぶっちぎって、ハイペースでせせこましくDJをするのが好ましいとは思えません。

それでも、1コーラスでどんどん次に行く方が盛り上がる現場が多いのもまた事実で、自分がかけたい曲をかけるだけのオナニーDJでないのであれば、より盛り上がる方のやり方を選択するのが良いと思います。

というわけで、ここでJ-POP DJのメモシリーズはおしまいです。
僕はこんな経験をして、こんなことを考えてDJをしてますよ、というシリーズでした。
BUBBLE-BのDJ出演の際は是非遊びに来て下さい。また、オファーもお待ちしております。

それでは皆様、良いJ-POP DJライフを!