離島の対馬にて、バス運転手さんに海に連れてってもらった話

離島の対馬にて、バス運転手さんに海に連れてってもらった話

先日、対馬に行った時の話。

その日は夜まで何も予定が無かったので、路線バスの1日フリーパスを買ってみた。
地元民の会話がBGMとなる路線バスは、その土地の風情を感じることができる乗り物だ。

この日は対馬の南の街である「厳原」から、北の街である「比田勝」まで縦断するように乗ってみて、めちゃくちゃ綺麗なビーチである「三宇田浜」でも見に行こうかと思った。

しかしこれが遠い。めちゃくちゃ遠い。対馬は縦に長いのだ。
片道約100キロ、2時間半の長距離路線で、まさに対馬島の縦断だ。
日本の離島の路線バスでは最長らしい。

それだけの距離があるので、普通に乗ったら片道3000円強もするのだけど、1日フリーパスだと往復で1000円で済む。しかも車内でフリーパスを買える。恐るべきお得感だ。経営が心配になるレベルである。

厳原の中心である「ティアラ」前のバス停でバスを待ち、地元の高校生らと一緒に乗る。

やがて厳原を抜け、対馬病院も通り過ぎたあたりから車内がガラガラになってきたので、前の方の席に移ったところ、いつのまにか運転手さんと喋っていた。

都会の路線バスなら運転中にお客さんと雑談なんて考えられないけど、対馬の長距離路線バスならではの牧歌的で懐の深いグルーヴ感が、何となく許してくれる。なんせ客は自分含めて2~3人、終点まで通して乗るのは自分一人という状況だ。

海辺の道や森の中のワインディングを、バス停をガンガン通過して突き進むバス。

運転手さんは暇なことをしている僕に興味を持ってくれたみたいで、
「どこから来たんですか?」から始まって、
「普段は韓国の観光客で満員になるけど、最近はガラガラなんで楽ですわ~」とか、
「対馬なんて何もないでしょ?」とか、
そんな話をしたりして。

「終点の比田勝からどこか行くの?比田勝泊まり?」
って聞かれたから、三宇田浜をちょっと見たくて、その後厳原に戻らなきゃ、と答えると
「このバスは三宇田浜まで行かないよ、三宇田浜に行くには比田勝で乗り換えになるけど、それ乗ると厳原帰れなくなるよ、せっかく来たのにねぇ」、と。

ん~そうなのか、しゃあないなぁ、もっと朝早く出れば行けたけど、二日酔いだったしな〜と思っていたら、

「比田勝着いたら、燃料入れるからちょっと待ってて。厳原行きのバスが出るまでの30分くらいの間に、車で三宇田浜見に連れて行くから」

え!何それ、まさかの展開!
ありがたく、甘えさせてもらうことに。

そしてバスは終点の比田勝に到着。
さっきまで路線バスを運転していた運転手さんは軽自動車のハンドルを握り、僕だけを乗せて三宇田浜に連れてってくれた。

「対馬は田舎ばい、何もないでしょ」
「都会の方がええでしょ」

そんな話を聞きながら着いた三宇田浜は、澄み切った水と真っ白な砂浜、岩場には天然のウニがいっぱいいるという、相変わらず嘘みたいにキラキラと輝く綺麗なビーチだった。
こんな美しいビーチ、なかなか無い。

ほんの数分という短い時間で写真を撮り、運転手さんの待つ車に戻る。

ここに来て良かった。

「今日は時間ないから残念だけど、次来たらもっと色々案内するから! まだまだいっぱいありますから。次は私を訪ねてきてくださいよ!」

ええ、もちろんまた来ますとも!

旅のイイ話がまた一つ増えた、そんな日だった。