「さくら水産」を知っているか。 (2004.12)

「友達以上・恋人未満」なんていう女性のエゴを正当化する言葉があるが、さくら水産に来ると「エサ以上、メシ未満」という、誰の何の正当化にもなっていない言葉が思いつく。夜は海産物を中心にした飲み屋として展開しているのだが(夜に行ったことないけど)、昼は\500で日替わり定食が食えるという安いメシ屋として展開している。昼も夜も、これこそTOKYOのグローバル・ダイニング。今日はここに行ってきた。

入り口には食券自動販売機(新札が使えない)とホワイトボードがあり、「A まぐろ刺身 B クリームコロッケ・エビフライ」と書かれてあるので、ここでAかBかをその日の気分や体調で選び、500円を投入すると「A定食」とだけ書かれた紙がポトっと出てくる。メインフロアにエントランスすると、大山のぶ代先生のような熟ウエイトレスの皆様が、大山のぶ代先生がドラえもんの声を出してない時のような声で一斉にやまびこコール。奥から順に、例え手前の方がガラガラであっても、人と人との間で一席だけ空いたカウンター席に誘導していく。東京という街は、詰め込み主義なのだ。

昼時となると、割と広いメインフロアには波のように客が押し寄せてくる。ほぼ全員30代後半から会社役員とおぼしき60代まで、背広にネクタイといった典型的なサラリーマンスタイルを踏襲している。そしてのぶ代ボイスなウエイトレスに「2名さまこの席にどうぞー」「1名さまこの席にどうぞー」と、奥から奥から順に埋められていく。昼時、他にもっと美味しいところがいっぱいある中であえてここに来る理由とは何だろう。そんな考え事をする間もなく、席についた瞬間3秒でご飯と味噌汁が出され、あと10秒でA定食のまぐろ刺身の皿が運ばれてくる。ビジネスは、スピードなのだ。

藤田田が創業した'勝てば官軍'日本マクドナルドでさえ、チーズバーガーをオーダーしてから出てくるまで20〜30秒を要することを考えると、さくら水産の3秒や、遅くても10秒といった待ち時間は、ミハイル・シューマッハのピットストップの時間に等しいフェラーリ・マジックである。フェラーリと同じ、深紅のまぐろ刺身が、目の前に運ばれてくるのである。

そしてここがさらにすごいのは、「ご飯お代わり自由」「おつゆお代わり自由」「生卵食べ放題」「のり食べ放題」「しゃけふりかけ振り放題」といった画期的なシステムである。ベースとなるご飯の品質は常にべちょべちょで低く、おつゆにはほとんど具が入っていないのだが、生卵を溶き卵にして、醤油をかけ、海苔を漬け、その海苔をしゃけふりかけのかかったご飯とともに食べると、結構美味しいものである。どんなものでも工夫とアイデア次第なのだなと思い知らされる。たとえご飯がべちょべちょであっても、溶き卵と海苔とふりかければ、如何様にもリマスタリングすることができるのだ。

斜め後ろが何だかさわがしい。効き耳を立ててみると、どうもサブフロアである「お座敷」に座らせろという客に、のぶ代クルーが(グーしかならない)手を焼いている様子。
のぶ代は皮肉っぽく大声で「わがままなお客様お座敷にどうぞ〜」と言うと、スーツ姿で50代とおぼしき男が激怒!
「わがままとはキミ、何事だ! わがままとは!」
しかしそんな罵倒にものぶ代は「キャハハハハ!」と笑い飛ばし、次の客を席へと誘導していく。慣れたものだ。
スーツ着て店員に切れる男っていうのはどこで見ても恥ずかしいものである。

溶き卵でご飯を一気に流し込み、店を出た。ちなみに、前述のちょっとエンスーOLをターゲットにしたミネラルウォーター専門店「アクアポータ」の地下にこの「さくら水産」は存在している。