ホンダのイメージってどんなの? スポーティ? それともミニバンとコンパクトカー?
実際、ホンダの今の売れセンは、フィットとフリード、ステップワゴンといった所だろうと思う。元気が良くて、明るくて、燃費が良くて、室内の広いコンパクトカー、ミニバン、というイメージ。ニュータウンに家を建てた新婚夫婦が犬を飼って、小さい子供と共にららぽーとあたりに買い物に行くのならば、フリードやステップワゴンのイメージとしてはぴったりだ。まさに平和!
そしてスポーティ部門のホンダも忘れてはならない。NSXはもちろんのこと、いろんなタイプR、ユーロR、CR-Zなど、F1で大活躍した時のイメージを、良く出来たエンジンと共にまだまだ育て上げるのもホンダのスポーツ。NSXだって開発中である。
しかしながら今、ひっそりと消えていこうとしている車種が2車種。フラグシップセダンである、レジェンドとインスパイアだ!
もう今月・来月でこの2車種ともに生産が終わってしまう。そして次期レジェンド、インスパイアの予定も未定なのだ。
ということでインスパイアに緊急試乗してきた。
現行型ホンダ・インスパイアである。CP3という形のモデルだ。これが現行型と呼べるのもあと少しなのである。
それどころか、かつてのインテグラやセイバー、ビガーなどと共に、過去の車になろうとしているのだという。
確かに台数が出ていないようだ。
が、車が悪いのか? そんなダメな車なのか? 受け入れられなかった理由は何なのか?
FFだからダメという先入観? FFだったらどうダメなのか? 高級車にFFは似つかわしくない、とよく言われるが、どうなの? と、僕は常々思っている。いつまで高級車のFFがダメな時代が続くのか。誰かの陰謀じゃないのか!?とまで(笑)
乗ってみないと分からないよね。
セダン全体で冬の時代と言われているが、トヨタでいう所のクラウン、日産だとフーガに相当するレジェンドすら無くなってしまうのは、結構寂しいぞ!
このインスパイア、V6 3.5Lのモデルである。他にはレジェンドとエリシオンにも採用されているエンジンである。
V6 3.5L NAで、280psを発揮する。おお、以前乗っていたスカイラインクーペのVQ35DEエンジンとほぼ同じ性能ではないか。しかしこちらは高回転型で、MAXトルクは6000回転の時に出るという。
乗ってすぐに分かるのは、レスポンスが良く、よく回るエンジンであるということ。トルコンの5ATと共に、1速時に結構グオンと回ってくれる。この辺のトルク特性は日産のVQ35とは全く違う。ホンダらしい、VTECらしい特性と言えるかも。
ただしその音は繊細で、振動もなく、なめらかフィーリング。エンジンの音も静かであり、グオンと回る時以外は影で仕事している感は出している。
静かだなと思ったら、こんなデバイスが付いていた。
エンジンの音と逆位相の音を車内に出す、ノイズキャンセリングシステム。
BRZやRCZのようにエンジン音を積極的に出す車があれば、エンジン音を積極的に消す車もあるものだ。
カタログを見るまで気づかなかったけど。
他、かなりのハイテクデバイスで武装された車である。ステアリングのギアすら可変する。
レジェンドはこのハイテクにさらにAWDが加わる。
乗り味は柔らかい。スポーティ、という感じではなく、やわらかセダン。でもロールするような感じではなく、フラット感あり。
高速道路を運転させてもらったが、その時に初めて真価が分かった。この乗り味は高速道路に乗ったときにドンピシャに気持ち良くなる。メルセデスのC200にも似た、圧倒的なフラット感があった。これは気持ちいい。BMW的なアテンザやレガシィとは真逆の、メルセデス的な方向性だと言える。しなやかなのである。
このショルダーラインがどこかC200を彷彿とさせる。
直進性能、乗り心地ともに気持ち良い車であるが、加速をするときに、「ホンダらしいスポーティさ」が顔を出す。
追い越し車線で加速をするとき、ふけの良いNAのVTECエンジンは、キックダウンと共に一気に回転数を上げたりする。この辺の処理はスポーティであるが、だからといって爆裂な加速というわけではなく、インスパイアの持つ世界観とややずれている感じがする。突然エンジンの存在感を感じさせるのだ。
ATも1速と2速が離れており、変速ショックもある。このクラスだと6ATは欲しい所だったりする。
そういう、スポーティDNAを持つエンジンならではの部分もあるが、世間の評価はともかく、良く出来たサルーンであると思う。後部座席も広いし、高級感もまずまず。
聞けばインスパイア、今日の時点で、あと50台作ったらおしまい、なのだそうだ。大量生産ラインではなく、ほぼ手作業でちまちま作られているのだという。モデル末期らしい状態だ。しかし各部が熟成された最高の状態であるとも言える。
今後、レジェンドとインスパイアの名前は一端消え、このクラスはアコードに統合されるのだという。
アコードは北米モデルと日本モデルとは別物で、アキュラブランドで発売される北米生産モデルのものが、今後日本に入ってくるという逆輸入の形式となるのだという。
日本のセダン市場をある程度見限った形、とも言える。為替の影響も大きいのだろう。
なので、このインスパイアは国内生産のホンダの大型セダンとしては、レジェンドと共に、今の所、最後となってしまうかも。
いいと思うんですけどね!