PCDJのコントローラーを求めて絶版機種にたどり着いた話

DDJ-WeGOを8年も使い倒してしまった

Pioneer DJのDJ用コントローラー「DDJ-WeGO」が発売されたのは2012年のこと。

CDJからPCDJに移行しようとしていた当時、コントローラーをどうしようかなと考えていた時に、こんなコンパクトなコントローラーが発売されると知り、すぐに池袋のPowerDJ’sで買ったのである。

それから今に至るまで8年間、ずっとこの初代WeGOを使ってきた。
裸のままリュックに入れて、北海道の利尻島から沖縄まであちこち持ち歩き、カラオケバーからDJバー、クラブなら数十人入ればパンパンの小箱から2000人規模の大箱まで、吹きさらしの野外からショッピングセンター、純和風の旅館まで、色んな現場に持っていった。

日本中の色々な場所で、音楽の魅力を伝えてくれる道具として動いてくれた。




そんな初代WeGOは今…

もうボロボロである。
何度か落下もさせたし、フェーダーのツマミだってどこかに消えた。

クロスフェーダーの右側にテープが貼ってあるのは、落下させた時の衝撃でフレームがずれて、一番右にレバーをやると無効なMIDI信号を送ってしまい、音が止まるという症状が出ているため。

プラッタも傷だらけ。戦場カメラマンの機材かよというほど、謎の傷が付いている。
リュックの中で何かと擦れただけだろうけど。

塗装は剥げ、テンポフェーダーのツマミは行方不明に。

4つのゴム足は全てなくなった底面。
このWeGO、完全に満身創痍だ。

でもまだ動くから、つい先日まで使っていたのだけど、そろそろ何とかしたいとずっと思っていた。
でも決め手に欠けていた。これに代わる機材が無いのだ。

PCDJの機材で、大事にしていること

PCDJ機材は、こうあってほしい。

1.本体がコンパクトであること
2.機能豊富で使いやすいこと
3.音質が良いこと
4.たくさんの音源を持ち歩けること

これを満たすシステムが今の「TRAKTOR PRO3 + Pinoeer DJ DDJ-WeGO + Roland UA-M10 + ThinkPad」であり、そこから動けない状態に陥ってる。

なぜか?
その理由を、上に書いた自分のPCDJの理想をひとつひとつ紐解いて明らかにしてみる。

本体がコンパクトであること

PCDJのコントローラーは、コンパクトなものから大型のものまで様々ある。
大型のものは中・上級者向けとして機能豊富で、さまざまな使い方ができて、音質面でも比較的良いパーツが奢られている。その分本体が高いが。

自分の場合、日本中あちこちに行く際に、荷物をコンパクトにしたい
コントローラーはリュックの中に入り、飛行機に乗るときに手荷物として運べるサイズがいい。

もう一つは、現場に持ち込んだ時、狭小なDJブースであってもちゃんと置けて安定させたい

これらの理由があると、DDJ-800とか、チャンネルが4つあるような大型機はまず無理

このサイズになると当然リュックには入らないし、狭いブースだとそもそも置けない。
持ち運ぶという用途は想定されていないからだ。

では、売れ線のDDJ-400サイズの中型機だったらどうか?

これなら持ち運べる。軽量だ。
しかしリュックに入るかと言われると、よほど大きなものかDJ用のスクエアな形のバックパックじゃないと厳しい。
現場にはまずまず置けそうだけど、まだ少し大きい

という理由から、DDJ-WeGOサイズがちょうど良かったのだった。

25Lくらいのリュックだったらスポッと入るし、何が良いかって、奥行きが短いこと。

これは、狭小なDJブースでやる場合に、お店の人と相談の上で、ターンテーブルのカバーの上にコントローラーを置いたり、PC用のスタンドの上にコントローラーを置いたことがある人なら分かると思うが、そういう場所での奥行きは罪である。
古いタンテカバーは、ドーム状の出っ張りが邪魔をしてくる。

「タンテの上はコントローラーの置き場じゃありません。DJはアナログかCDでやりなさい」

という人もいるだろう。ごもっともだ。でも出番まであと10分なんて時、奥行きは敵なのだ。
おそらくDDJ-400サイズのコントローラーは、このようなドーム状の出っ張りのあるタンテカバーの上には置けない。

だから初代WeGOとなる

機能豊富で使いやすいこと

DJコントローラーは、もっと小さなサイズのものも色々と発売されている。
特にNumark社は意欲的に、Pioneer DJとは違う路線のものをラインナップしている。

たとえばこのNUMARK DJ2GO2なんかはめちゃくちゃコンパクト。
リュックに入るどころか、ハンドバッグにすら入りそう。
でも縦フェーダー無いし、EQ無いし、色々と無い。小ささなりの犠牲もそれなりにある。
ここまで削られるとかなり厳しい。

最低限、縦フェーダー、EQ、ホットキュー、エフェクト操作関連、曲ロード関連のツマミは欲しいところだ。
WeGOシリーズにはそれらがある

音質が良いこと

音質が良いに越したことはない。

しかし、コンパクトなDJコントローラーは、たいがい「入門用」「ホームユース」とされていて、音質もそれなりだったりする。
DAコンバーターとかアンプ、そういった部分が廉価なパーツになっている。家の中なんだからそこそこの音質で鳴ればそれでいいでしょ、ということだ。

でも、こっちはコンパクト機を現場に持ち込むので、音質に妥協したくない。

良い音質の定義は難しいが、例えば今の現場のスタンダードとなっているCDJのCDJ2000NXS2から出る音を「良い音質」としていいと思う。
なんせ30万円近いハイエンドCDプレイヤーだ。

そんなハイエンド機器を使うDJと同じタイムテーブルに並ぶのだから、ホームユース機材を使ってると、自分の出番で「あっ、俺の出音ショボ!」と感じてしまいがちである。

いや、別にWeGO本体のオーディオアウトからの出音が悪というわけではない。普通に聴けるし問題無いレベルだ。
NUMARKのPARTY MIXと比べたら次元が違う(あちらがゴミすぎる)。

でも、WeGO内蔵のオーディオOUTの音質は、CDJ2000NXS2の音質と比べると、やっぱり負ける。全然負ける。
高域がうるさいし、全体的にのっぺりとしてる。

だから、自前のシステムを持ち込むDJなら音質にこだわりたい。
音質には投資すべきだと思う。音質の差はそのままDJの差となる。
悔しいが、ホームユースと謳われてる製品を現場投入するな、ということだ。

そこを改善するには、外部のオーディオIFを使うといい。
このブログでも何度も紹介しているが、Roland UA-M10の出音は素晴らしい。

とっくに廃版になってるけど、2台持ってる。
4ch出せて、コンパクトで、音質バッチリなやつって、これくらいしかない。
CDJ2000NXS2の出音と比べてもショボい感じはしない。1bit DACがスムースな音で鳴ってくれて、耳に痛くない。低域の分離もいい。

問題はPCDJ用のソフト側が対応しているかどうか。

まず、自分の場合は大半の音源をApple Lossless(ALAC)で持ってるので、PCDJソフトはALAC対応のものを。

有名どころから行くと、Serato DJ ProはそもそもSerato用と謳われたオーディオIFしか使えないため、コントローラーのオーディオIFを飛ばしてもう一台繋いだオーディオIFから音を出すといった自由なことはできなさそう。設定画面にそういう項目がない。残念。

rekordboxは設定可能!

rekordbox専用コントローラーを買っても外部オーディオIFを使うことができそう。

TRAKTOR PRO3も可能。

rekordbox用かTRAKTOR用かのどちらかのコントローラーを使うことになるが、サブスクのrekordboxに対して、自分はTRAKTORのライセンスを持ってるので、TRAKTORかなと。
そうするとrekordbox専用コントローラーは対象から外れてしまう。

TRAKTORを使えるコンパクトなコントローラー、というだけで選択肢はかなり狭くなる。
だから初代WeGOだ

たくさんの音源を持ち歩けること

これはPCの話。

母艦のiTunesライブラリは1Tを超えているので、これまではDJ用のノートPCのためにそこから一部を選んでインポートしていたけど、その作業がなかなか面倒臭い。
できれば母艦のライブラリまるごと持ち歩きたいが、そうするためには2Tなどの大容量のSSDが必要となる。

2TのSSDを標準搭載したノートPCなんてほとんど無いので、あとからDIYで換装可能な機種となる。

PC本体はコントローラー同様にコンパクトで軽いものがいい。
コントローラーとオーディオIFのため、USB端子は2つ欲しい。
メモリの増設ができればありがたい。
キーボードは光って欲しい。(DJ用PCではこれ必須)
ACの口はUSB-CのPDがいい。ACアダプタを家に忘れて現場に来た時でも、PDだったら何とかなる。
DJをした出先で仕事をすることもある。DJ用のPCと仕事用のPCを同じものにしたいので、Windowsを。

いろいろ選択肢はあるけど、好みなどもあり、この夏にThinkPad X390を購入。

別に2TのSSDも購入。

夢の「家のライブラリを全部持ち歩く」ことが実現!
これ、精神的な安心感が予想以上。

自分がPCDJに求めるのはざっとこんな感じ。

色々買ったけど…

これまで、初代WeGOの後釜探しをして、色々と買った。

NUMARK PARTY MIX

NUMARK PARTY MIX
これ、かなり理想に近かった。横幅も奥行きもコンパクトで、本体もめちゃ軽い。
縦フェーダー、EQ3バンド(一番上のツマミはGAINになってるけどEQとしてマッピングする)、ブラウザ用のツマミとロードボタン。
ホットキューとエフェクトはボタンを兼ねるけど、とりあえず最低限は揃ってる感じ。

出音はゴミみたいな音質だが、とりあえずTRAKTORの操作はひと通りできる。
でもプラッタの回り心地とか、その他色々とチープすぎて、なんか安定感に欠けるな…と思い、やっぱり現場に持っていかなくなった。

DENON MC3000

DENON MC3000。金属製で重厚な作りで、出音も良く、これだと外部オーディオIF繋げなくても大丈夫かなという音質。
機能も豊富で良い感じ。

ただ、やっぱり重い! ズッシリくる。
そして外部ACアダプタ必須。必須なのはいいけどそういう物は家に忘れて現場に来がち、現場に忘れて家に帰りがちな自分…

みたいなことがあって、一度現場投入したきりで手放してしまった。

JDSOUND GODJ Plus

クラウドファンディングで資金を集めて作られた、オールインワンのDJ機材。JDSOUND GODJ Plus
これだー!と思ってクラファンで投資して、発売日に入手した。

物自体は良くできてて、レスポンスもいいし、スピーカーからの音もいいし、LINE OUTの出音も悪くない。バッテリーも持つし。
何より本体が小さくて軽いので、これだけ持っていればどこででもDJが出来るというのは、本当に夢があった

こんな所でDJするとか、

こんな所でDJするとかは、GODJ Plusだから出来る芸当。

なのだけど、ALAC形式のファイルが使えなかった
また、たくさんの曲を突っ込むと、検索性が著しく低下した。
ということで、これも手放し。

ちなみにこれを作ったJDSOUND社は破産して、現在はサポート体制が不明に。
僕のは壊れなかったけど、これよく故障するみたいで、壊れたら直すことができない。ほんとひどい話だ。

全部並べたこともあった。

Pioneer DJ DDJ-WeGO3

やっぱりWeGOシリーズがバランスいいけど、WeGOシリーズは4まで出てるので、初代のダメな所が色々と改善してるかも知れないと思い、メルカリでWeGO3を落札!

シュッとした見た目なのはいいけど、実際にTRAKTOR3とUA-M10で使ってみると、色々あった。

一番ネックなのは、マスターボリュームとヘッドホンボリュームが、本体内蔵のオーディオIFの音量を調整する以外に使えないこと。つまり、この2つのツマミを回してもMIDI信号が送られることはないので、外部オーディオIFを使う場合、TRAKTORにマスターボリューム調整の信号が送れない。
特にヘッドホンボリュームについてはTRAKTOR側でも調整できないので、もうお手上げ。
一度現場に持っていったけど、ヘッドホンボリュームがどうすることもできず、爆音でやるはめに。耳がおかしくなりそうだった。
大人しくWeGO3の内蔵オーディオIF使うしかないのだ。ホームユースの音質でな。

あとはプラッタの回りのボタン配置。どのボタンが何なのかというのが、形状が同じなので分かりづらい。一応文字の部分だけが光るようになっているけど小さくて見づらいし。

iPadなどを挿すための凹みがあって、その分奥行きも初代WeGOよりある。それも自分には必要なかった。(これはWeGO2からずっとある)
見た目はスタイリッシュなんだけど。

ということでこれも手放し。

その他、買いそうになったもの

Pioneer DJのDDJ-200
サイズ的には素晴らしい。これぞ、というもの。PARTY MIXよりもマシだろう。

でも… TRAKTORでは使えないようで。(未検証)
rekordboxに乗り換えるならアリかも知れない。

そしてブラウズ系のボタンが無いではないか。あの機能はかなり使うので無いと辛いなあ。
ということでパス。

KORG KAOSS DJ
楽器メーカーのKORGが試しにDJ機材作ってみました~カオスパッドにDJコントローラーをくっつけるという逆転の発想っス~的な感じでリリースされた、KORG唯一のコントローラー KAOSS DJ。
見るからにスゲー癖強そうだし、プラッタはタッチ式だし、ボタン配置などもピンと来ないし、何より中央に鎮座するカオスパッド、そんなに積極的にエフェクトかけねえよ…って感じで。
本体は薄くて軽くて良いんだけど、パスかな。

結局、これになった

色々と考えたあげく…最終的に買ったのは

結局またコイツになった。初代WeGO
色まで同じだ。

当然中古での購入になるけど、とても状態が良くて気持ちいい。

テンポフェーダーにツマミが付いていることは、なんて素敵なのだろうか。(前のWeGOは抜け落ちて紛失)

この2020年に初代WeGO買って、オーディオIFはRoland UA-M10で、それをThinkPadでドライブさせるというのは、PCDJのシステムとしてかなり少数派だと自覚する。
そもそもWindowsでDJする人が少ないもんな。

でも、現時点での自分的ベスト構成がこれ。

使いやすいし音もいいし、コンパクトでリュックに入るし、曲全部持ち運べるし、全部バスパワーで動くし、サブスク課金いらないし。

早速現場投入してみた。
ThinkPadも新調、初代WeGOも中古だけど新調したのに、もの凄く手に馴染んだ。

ということで、まだしばらくこのセットでやっていくので、DJオファーお待ちしてます~!遠方でも近所でも!