日本のサグラダファミリア、日本の九龍城などと呼ばれることもある、沢田マンション。
先日、高知に行く機会があったので、知人に案内してもらった。
名前はもちろん、その概要などは知識として知っていたけど、実物を目の前にするとやはり迫力が全然違う。
近寄ってみると、その「形」のどこか有機的な、生物みたいなグニャグニャ感。
そして至る所に共存している植物。
まず、それに圧倒される。
沢田マンションは、沢田嘉農氏が設計図も無しに、夫婦二人で手作りで作り上げたマンションだ。
おおらかな時代に建ち、おおらかなこの土地だからこそ、現存していると言えよう。
マンションの入り口でとにかく目を引くのが、古い発動機の数々。これは沢田嘉農氏が実際に色々なことに使ったものだというが、それらを撤去させずにところ狭しと展示し続けている。スチームパンクのような独特な雰囲気を醸し出している。
中央にあるゴンドラを下から見上げた所。このゴンドラに乗れるのは一部の人だけ、だそうだ。
最上階は大家である沢田氏夫妻の住居となっており、このマンションの建設に使われた資材や発動機がところ狭しと置かれている。これがとんでもなく格好良い。
そしてこのクレーンですら、手作りだという。
このクレーンで一人の人間が、一生をかけてマンションを作り上げたのだ。
マンションの内部は迷宮のように通路と階段が交差している。今なお改築を続けており、間取りが変わったりすることがあるようだ。
コンクリートはデコボコしているし、規則的にビシーっと並んだものがあまり無い。
このマンションを見て、「住みたい」と思ってしまった。便利・不便を超えた所にある何かが、強烈に魅力的なのである。それは、一人の男の頭の中にあった設計図と、本人により手作業で延々と作られたこの建築物が発する、有機的な、どこかアメーバのように増殖しているような、生物のような「暖かさ」があった。それでいて、屋上農園もしかり、至る所にある植物。有機的な建築物と植物との融合が自然になされており、まるで生きているようなマンション。
沢田嘉農氏は亡くなったけど、こんなに格好いいマンションが日本にあるのだ。まさに生涯をかけた作品。惹かれる人が多いのも強く頷けた。