この時代にCDを作る意味って…
「CDはもうオワコン!CDなんか売れません!」
「今年入ってCDなんか1枚も買ってないし!」
「やっぱサブスクでしょ」
「アナログレコードは買うよ!」
という話を、もう何百回も聞いた。
分かったよ!CDの時代は終わったんだ。
CDなんて出さなきゃいいんでしょ?
あんなの前時代の廃れたメディアだよ!
そんなことは知っているが…
またCDを作った。
M3でリリースするし、ネットでも販売する。
でも…
「家にCDプレイヤー無いんだよね」
「車はBlutoothオーディオしか付いてないんだよね」
そんな声を聞くと、いよいよか、という気がしないでもない。
時代には逆らえない。
アナログレコードやカセットテープみたいに、マニア主導で、CDもいつか復権するかも知れないけど、何年先だか分からない。そんな時代まで自分が生きてるのかすら。
でも作品を作ったら、CDという形態でアルバムにして、ジャケットやインレイ、盤面デザインも含めて、「できたよ!」と言って物理的な何かをリスナーの皆さんに届けたい。
アーティストやレーベルのエゴかも知れないけど。
「配信始まりました~」でもいいんだけど、やはり味気ない。
サブスクは、世界のレジェンド級アーティストのためのもの。
マイケル・ジャクソンさんとか、ビートルズさんとか。
マイケルのアルバム「スリラー」を聴きたくなった時、スリラーをCDで買のではなく、サブスクで聴くのがちょうどいい。そんな人が何億人もいるから、マイケルは今でも稼ぎ続けている。
これが1000枚程度しかプレスしない(1000枚程度しか売れない)私のような泡沫アーティストが真似したところで、1再生0.1円くらいの世界。ひと月の売上げは150円とか、悪夢のような状況になるだけ。そんなことでは製作費なんて一生ペイできず、音楽家廃業待ったなしである。YouTubeの方がマシ。
さあ困ったぞと。
日本には「M3」がある
世界中でCDがオワコンになった今、まだCDが流通しているのは日本だけらしい。
日本の音楽配信事情だけは世界と違っていて、ガラケーでの「着うた」ブームになってから消滅というターンを10年くらい経験したせいか、世界的な音楽配信事情からは遅れをとった。その結果、2020年でCDと配信の市場比率は7:3だとか。まだまだCD優勢な、変わった国の出来上がりである。
とはいえ、売れているのはメジャーアーティストが中心。
インディーズになると、特に泡沫アーティストは、大型レコード店ですらあまり仕入れてくれなくなった。
地方のレコード店になると0枚が基本。
なので流通させても、売れるのは9割以上Amazon。
今や泡沫アーティストにとって、インディーズ流通とはAmazonへ卸すこと、になっている。
Amazonってそんなに好きじゃないんだけどな。
アーティストの作品は、レコード店の新譜の棚に並び、試聴機もに入り、バカスカ売れることが華だと思うんだけど、力不足で時代に逆らえず、リスナーの皆様には申し訳ない感じ。
(流通業者にプロモーション費用を払えば店頭ポップなどは作ってくれる)
そんな私みたいな草の根レーベルの拠り所は、なんといっても音系・メディアミックス同人即売会「M3」。
インディーズと違って同人音楽ってのは、即売会が主戦場。
その後はショップへの委託販売と、サイトでの直販。
その大半がインディーズ流通には載らない。
だから同人音楽というのは、レコード店やAmazonでは見かけないような、独特の作品たちがたくさんある。
2次創作への考え方とか、販売ではなく頒布という言い方をする意味とか、そもそも概念が違う。
日本は知っての通りアニメ&ゲーム大国。オタクによるオタクのための国家。クールジャパン。
だから世界の潮流とは無関係に同人市場が元気だ。
おそらく今、世界で最もCDが販売される場所はM3の会場だろう。
日本の宝と言っても過言ではない。
CDより先にCDプレイヤーが絶滅寸前
でも、CDはCDプレイヤーがあって初めて再生できるもの。
CDプレイヤーは家電メーカーが作るもの。
家電メーカーは世界のマーケットを相手にするから、世界的にCDが売れなくなってるのなら、CDプレイヤーも作らなくなるのが当然の流れ。売れない製品を作っても仕方ないからね。
音楽を聴くのはスマホとBluetoothイヤホンの組み合わせが主流。
母艦のパソコンも、CDドライブのないノートPCが増えた。
今のMacBook Proなんて、どの機種もドライブが付いていない。
車だって、現行の多くの車種にCDプレイヤーが付いていない。
最新のスズキ・アルトも、ナビ装着車のナビにCDドライブはなく、Bluetoothでスマホと接続させる使い方が主流だ。
いくら同人音楽が盛り上がっていても、CDは再生環境がどんどん漸減し、追い詰められている。
だからCDだけを作っていては、いずれ死ぬ。
同人音楽のCDにダウンロードコードを付ける提案
去年、久しぶりにCD「最果てアンビエント」をリリースしたとき、そのような状況を目の当たりにして、打開策を考えた。
それは、CDにBandcampのダウンロードコードを付ける、というもの。
デジタルなのにダウンロードコードを付けるとは?と疑問に思うかも知れない。
それは、その人が今でもCDに慣れ親しんでいる人だからだろう。
前述の通り、CD再生環境が漸減していく中で、CDという円盤メディアが終わりを迎えつつあるのは事実であり、CDに慣れ親しんでいる人も、どんどん減りつつある。
かと言ってサブスクに流せば、ひと月の売上げは150円だ。
自分はマイケル・ジャクソンではなく、ロングテールの端っこの、泡沫アーティストであることを忘れてはならない。
じゃあBandcampで販売するとか、iTunesで販売するのは?
それもいい。しかし、それだけだと味気ない。
物理メディア要らないよ~場所とるよ~というリスナーのために、BandcampやiTunesでの販売も行うのが良いだろう。サブスクと違って、ひと月150円の売上げということも無いだろうし。
でも、物理メディアには良さがある。
その両方を一気に満たすのが、CDにBandcampのダウンロードコードを付ける、という方法だ。
Bandcampは、パスワードを入れれば無料でアルバム全曲がダウンロードできるという機能がある。
1ダウンロードごとにユニークなパスワードが発行されるので、1000人分のパスワードを発行するなら、1000枚のそれぞれ異なるパスワードを記したメモをCDに添付する必要がある。
(同一のダウンロードURLと同一のパスワードを印刷すると、それが流出したら終わりになる)
そして、パスワードの書いた紙はプレス工場でCDのジャケット内部に投げ込むか、ラベルシールでCDに貼り付けるかだ。
工場で投げ込むのが手間の面からもベストだが、それが出来ない場合はCD貼り付けとなる。
貼り付けた場合はパスワードが剥き出しになるので店頭に並べることはできないが、小規模なら手軽である。
なので、M3やイベント会場での手売り、直販での販売には、ダウンロードコードのラベル貼り付けが良い気がする。
これでCDプレイヤーが無い人でも聴くことができるし、アートワークを楽しんでもらうこともできる。
ダウンロードに付加価値を付ける
そして、CDを再生できる環境のある人にも、是非ダウンロードをしてもらえるように、ダウンロードに付加価値を付けたい。
1つ目は「ハイレゾ」。
CDは44.1kHzの16bitという音質規格のメディアだが、時代はハイレゾだ。
つまり、96kHzの24bitというCDの4倍のデータ量でよりヌケのよい高音と滑らかな音の大小が実現できて、音空間がよりリアリティのあるものになる。
(前提として、DAWでハイレゾ環境で録音・制作し、ハイレゾ環境でマスタリングする必要がある)
Bandcampは96kHzの24bitのハイレゾ規格まで対応しているため、CDで買ったリスナーに、ハイレゾ版を付けることができる。
Bandcampは賢くて、ダウンロードできるファイル形式も複数選べる。WAV、AIFF、ALAC、FLAC、MP3など。
ダウロードコードを入手した人は、好きな形式を手に入れることができる。(1アルバムにある複数のファイル形式、全てダウンロードすることも可能)
2つ目は「ボーナストラック」。
Bandcampのアルバム曲にボーナストラックとして数曲加えると、CD版より多くのトラックをダウンロードすることができる。これもダウンロードならではの付加価値。
(あとはこっそりミックスを微調整したりとか…)
全タイトルにダウンロードコードを付けます宣言
ということで、これからM3やサイトで販売する全タイトルにBandcampのダウンロードコードを付けます!!
もちろんBUBBLE-B feat. Enjo-G新作「君に聴かせたいテクノがあるんだ」にも付きます。ハイレゾです。
Enjo-Gさんの声が96kHzの24bitで、より汚く、迫って聞こえます。多分。
というわけで、4/24のM3 ク-13a SPEEDKING PRODUCTIONSブースでお会いしましょう。
また、直販サイト「BUBBLE-Bストア」でも、各種タイトルを取り揃えております。