人間はすぐに壊れるらしい
人って自分が思っているよりもずっと繊細で、何かあるとすぐに壊れるらしい。
どんなに明るい人でも、どんなに多才な人でも、どんなに頭が良い人でも、すぐに壊れる生き物らしい。
壊れてしまった人は「鬱」と呼ばれる。
身近にも鬱になってしまった人の一人や二人、いるのではないだろうか。
そんな人を見て、まさか自分は大丈夫だろう…と思っていても、壊れる時は突然来るらしい。
自分の場合、2015年の冬くらいに、色んなプレッシャーや忙しさで壊れた。
そんな状況に陥った。
どうしようもない。
元々自律神経が弱くて、夕方になるとカーッと火照ったり、耳が真っ赤になったりすることがあったが、そこに精神的なストレスが加わってしまった。
とにかく、動けない。
それでまた状況が悪くなるという、負のスパイラル。
この感じは経験した人にしか分からないと思う。
それでもDJやライブは続けていたので、そういう場では感じさせないようにしていたけど。
医者に行って薬をもらっても
「そういう時は医者に行け」と人は言う。
本やネットにも書いてあり、鬱の療法としては基本だ。
医者に行って「あなたは鬱ですよ」と書かれた診断書をもらって、しばらく会社を休めと。
そして鬱を和らげる薬をもらって飲めと。
鬱に処方される薬とは脳神経に直接作用する飲み薬で、何らかの脳内ホルモン物質の分泌を止めるとか増やすとか、感覚を麻痺させるという働きをするものだ。
鬱を治す薬は存在せず、あくまでも「感じなくさせる」という対処療法である。
しかしその手の薬がどうにも気持ち悪くて、何でそこまでせんといかんのだ!馬鹿らしいという気持ちが拭いきれず、一度も医者に行かなかった。
「医者に行け」という周囲のアドバイスにも反発した。納得出来なかった。
とりあえず自律神経から何とかしようと思い、まず漢方から始めた。
若甦S錠というもの。これで自律神経を整えようとした。
そしてサプリメントを採ろうとした。
コリン、DMAE、レシチン、セントジョーンズワートなどの、「気持ちが前向きになるもの」「脳が冴えるもの」みたいなサプリをひたすら買って、摂取した。
でも、見事に何も変わらなかった。
それどころか健康診断で盛大にひっかかり(肝臓のとある数値が前年の10倍に膨れあがる)、再検査を受けるハメになったので、サプリメントは全部捨てた。
こんなのではダメだと思い、少しでも前向きになれる行動をしようと、旅の計画を立てた。
離島への旅で確信した感覚
以前、北海道の利尻島にハマって何度も行ったことを思いだした。
初めて行った2001年から続けて何回も行き、最後に行ったのは2007年だった。
初めて行った時はまだ新卒3年目とかの頃で、あの頃も色々と悩んでいたなぁと。
あの島はどうなっているだろう。
あの時食べたウニはまだ食べられるだろうか。
最後に行った2007年からしばらく行かず、9年間すっかりご無沙汰し、少し忘れかけていた利尻島に行くことにした。
しかも、わざわざフェリーに自分の車を乗せて行った。(結構高いんだよな~)
舞鶴港から小樽港へ。そこから一気に日本海沿いを北上した。
稚内に着いた。
すっかりリニューアルされたフェリーターミナルから、利尻島行きの船に乗った。
実に9年ぶりだ。
デッキから、近づいてくる利尻島が見えた。
少しずつ大きくなる利尻富士を見て、涙が止まらなくなった。
他の乗船客で、泣いてる人など一人もいない。自分だけが何故か泣いている、という意味不明な状況。
何だか分からないけど、「これだ!」という感覚がした。
生まれ育ったわけでもないのに、ここには何かあるんだろうなあ。
久しぶりの利尻島で過ごした何日かは夢のように楽しくて、心にこびりついた重くて暗い何かが少しずつ溶解する音がした。
そうか、これか、と確信した。
それからはまた利尻島に毎年行くようになった。
(※あれ以降リピートしている利尻上陸では別に泣いたりせず普通です)
それ以外の色んな場所への旅も加速した。
ひょっとしたら、旅はどんな精神薬やサプリにも勝る最強のセラピーかも知れない。
40を越えてからの自分にある、ローカルで何かしたいという気持ちは、おそらくそこが原点になっている。
人生後半戦の、新しい原点かも。