DJコントローラーの音質と音量を向上させる方法

DJコントローラーから出る音が小さい問題

DJコントローラーを使ったPCDJは便利な点も多いけど、次第点だなと感じる点もある。
それが、「音質がいまいち」「音量が小さい」という点ではないだろうか。

特にUSBバスパワーで動く小型のコントローラーで、そう感じがち。

DJの現場で、CDJのDJからDJコントローラーを使う自分に替わったとき、DJコントローラーからの音が何だか小さかったり音質的にノッペリしていたりシャカシャカうるさいと感じて、何だかゲンナリした経験はないだろうか。

残念ながらこれらは、気がするのではなく事実である。
その原因は2つ考えられる。

1.小型DJコントローラーは音質に関する回路がチープ

いきなり身も蓋もなくて恐縮だが、これである。

上記にて「USBパワーで動く小型のDJコントローラー」と書いたが、ほとんど全ての小型のDJコントローラーは入門用と位置づけられており、お手頃な価格で販売されている。
お手頃な価格なのは嬉しいが、何故その価格が実現しているかと言えば、機能や機構が簡素であり、使われているパーツのグレードが普通かそれ以下だから、だ。

そもそも、USBパワーで動くような小型のDJコントローラーは、本格的な音響設備のあるクラブでプロが使用する機材ではなく、ちょっとしたパーティなどでホビーとして使用する機材というコンセプトで作られている。
だから、本格的な音響設備のあるクラブに持ち込むと、ちょっと性能不足になる。悲しい。

私が以前持っていたこの機材はNumark製のParty Mixという、1万円弱で販売されていたおもちゃみたいなDJコントローラー。
小型軽量ですぐ壊れそうで、背面にはやたら明るいLEDが3発装着され、BPMに合わせて無駄に点滅するアホな憎めないやつだ。
まさにホビーユースを絵に描いたようなコントローラーである。しかしLINE OUTからは常時サーっとヒスノイズが…

こういったDJコントローラーと、クラブにある機材とでは、出音が違って当然だ。

音質やパフォーマンス性にこだわるクラブには、Pioneer DJ製のCDJ-3000CDJ-2000NXS2DJM-A9といった機材が用意されている。
それらの価格は30万円から40万円で、AlphaTheta社の最新テクノロジー高品位のパーツが奢られた高級機材だ。(だから機材ごしに乾杯すると殺される)
当然ながら素晴らしい音質・音圧を聴かせてくれる。
たかだか3万円か4万円のDJコントローラーの出音が、こいつらに太刀打ちできるはずがない。

2.USB2.0のバスパワーによる省電力の結果

小型のDJコントローラーは、たいていUSB2.0のバスパワーで動作する。

USB2.0のバスパワー電源とは、500mAhの電流と5Vの電圧を供給する規格で作られている。
これがDJコントローラーにとっては、絶妙に不足気味なのだ。
マウスやキーボードのようなパソコン周辺機器を接続する程度なら問題ない電力だが、ちょっとリッチなことをするには足りない。

4チャンネルあるような大型のDJコントローラーは、ACアダプタを必要とする機種が多い。

大型のDJコントローラーは多機能だ。
ボタンやツマミ、プラッターやタッチセンサーなどのインターフェース類も多く、LEDなど光りものや、機種によっては液晶モニターまで内蔵している。
それに加え、アウトプット端子も単純なRCA端子だけでなく、XLR端子、TRSのフォーン端子は当たり前。マイク入力、AUX入力まで装備していたりと、オーディオ部も充実している。

これらを動作させるにはUSB2.0バスパワーの電力では足りないから、ACアダプタから電力を供給する。

大型DJコントローラーのイメージ (FLX10)

おそらく小型のDJコントローラーもACアダプタからたっぷりと電力供給させた方がアンプ回路も豊かな音を奏でる。
でも、ホームユース機材だったらすぐに繋いでパッと音出す方が良いよね、という判断からUSBバスパワー方式が採用され、少ない500mAhの電流を機能部光り部音質部の回路で分け合った結果、音量や音質の面で不利になってしまうのだ。

その結果、「DJコントローラーで良い音を出したければ大型機を買え」となってしまう。

いや、小型機で良い音を出したいんだよこっちは…

小型のDJコントーローラーは安価な入門機で、音質の回路がそこそこ
USB2.0のバスパワーによる電力では十分な音量・音質に達しない

外部オーディオインターフェースを導入しよう

そこで、DJコントローラーから音を出すのではなく、パソコンのUSBポートをもう1つ使って別途接続したオーディオインターフェースから音を出す方法がある。

オーディオインターフェースのイメージ

USB2.0のバスパワー動作なオーディオインターフェースでも、大半の機種がDJコントローラーより音が良く、音量も大きいだろう。
なぜなら、USB2.0からの電力をオーディオ回路に集中投下しているからだ。

じゃあすぐにでも導入しよう!と行きたいものだが、少し待ってほしい
機種選びをしっかり行う必要があるのだ。それがこの記事の本題でもある。

4チャンネルOUTができる機種を選ぶべし

オーディオインターフェースの基本的な機能として、何チャンネル入力で、何チャンネル出力か、というのがある。
1万円から2万円台の入門機だと大概、2チャンネル入力で、2チャンネル出力だ。これを通称、2イン・2アウトと呼ぶ。

Steinberg UR22C

例えばベストセラー機種のこれ、SteinbergUR22Cだと、2チャンネル入力2チャンネル出力、そこにMIDIのINとOUTが付く機種となる。
入力はXLRとTRSの互換端子が2つなのでマイク2本かLINE2本、もしくはハイ・インピーダンスモードをONにしてギターを直刺しして使える。
出力はTRS端子がLRと2チャンネル、その同じ音が前面のヘッドホン端子からも出るというものだ。

この機種は自宅でDTMをする人のためのもので、必要十分な機能と性能が与えられている。

しかし、PCDJの外付けオーディオインターフェースとしては選んではいけない
なぜならLINE OUTヘッドホンOUT、これらを別々に出力するため、4チャンネル出力が必要になるためである。
そうなると、手頃な価格のオーディオインターフェースのほとんどはDTM用の2チャンネル出力機なので、候補から外れることになる。

DJソフトによって違う仕様

外部のオーディオインターフェースを使う時の仕様は、DJソフトによって違う。

まず、Seratoは独自のドライバでDJコントローラー内蔵のオーディオインターフェースを制御しており、そもそも外部に何かを付け足すという発想が無いので除外。
その代わりスクラッチやDVSのレスポンスが良く、安定している。

あとの4つは、WindowsだとASIOドライバ、macOSだとCoreAudioドライバというものを使ってDJコントローラー内蔵のオーディオインターフェースを制御している。
VirtualDJ以外は、1つのソフトで使えるオーディオインターフェースは1台という仕様なので、DJコントーローラー内蔵のオーディオインターフェースを選んだらそれだけをエクスクルーシブに使用する。
つまり、外部の機器を選とDJコントーローラーのオーディオインターフェースは使えなくなる。だからヘッドホンOUTも可能な4チャンネル出力できるオーディオインターフェイスを導入すべし。

rekordbox、TRAKTOR PRO、djayユーザーの人は4チャンネル出力のオーディオインターフェイスを買うべし

だが、4チャンネル出力ができるオーディオインターフェースは帯に短し襷に長しな機種が多く、選択が難しい。

(VirtualDJは複数のデバイスを並列に接続できるので、この縛りが無くて楽である)

4チャンネル出力可能!オーディオインターフェースのおすすめ機種語り

Roland UA-M10

いきなり生産終了機種ですみません。
Rolandの小型オーディオインターフェース「UA-M10」

こいつはタバコの箱くらいのサイズなのに、4チャンネルアウトが可能。(インは無い)
その音質も良く、小型DJコントローラーからの音とはかなり違う。
USB2.0バスパワー駆動なのだけど、その500mAhの電流の最大限まで音質向上に回す設計のようで、かなりリッチな音を出してくれるのだ。
サンプリング周波数を96kHzにして、1bit DACモードで出すと良い感じ。

ただしステレオミニOUTが2つという仕様と、USBがmicroUSB端子なところ、ボリューム調整が+-ボタンというところが残念ポイント。

生産終了してだいぶ経ってるので今はもう強くは推さないけど、これに変わる機種は未だに無く、みたいな。

AUDIENT iD14mkII

これが本命!
お手頃で、音が良くて、使い勝手の良い4チャンネル出力可能なオーディオインターフェースで、イチオシはこの機種「AUDIENT iD14mkII」

AUDIENTというのは、イギリスにあるミキシングコンソールとオーディオインターフェースの会社。
ここが現在発売している「iD mkII」シリーズのうち、2チャンネル入力・4チャンネル出力を持つ「iD14mkII」をお勧めしたい。

私はこのシリーズの1つ下の、2チャンネル入力・2チャンネル出力の「iD4mkII」をVirtualDJで使っているが、とにかく音が良いと感じる。
前述のRoland UA-M10よりもメリハリのある豊かな音を出してくれる。

その秘訣がこれ。
この機種もUSBバスパワーだが、USB3.0、それもUSB-Cによるバスパワーなので、供給電流が1500mAhと余裕があり、ACアダプタが無くても電力に恵まれているからだ。
(USB3.0では在来のUSB-A端子からも電源供給できるが、その場合は900mAhとなる。これでも動くが、iDシリーズは1500mAhで内部回路が昇圧されて最高出力になるらしく、是非USB-Cで繋ぎたい)

それはスペックにも現れていて、この機種のアナログOUTのダイナミックレンジ(音の強弱の差)は126デシベルと、かなり良い数値を出している。
ダイナミックレンジは、このクラスの大半の機種で100デシベルちょっとだったりするので、iD mkIIシリーズの性能が抜きん出ている。
ダイナミックレンジだけが音質の良さを計るものではないが、実際に音を出してみると、音の存在感、低音の分離、解像度、リズムのパンチ感がよく分かる。
ちなみに、オーディオインターフェースにはダイナミックレンジやS/N比の記載がスペックに無い機種も多いが、それらはマーケティング上不利になるのでわざと載せていない、ということらしい。

また、オーディオインターフェースによくあるハーフラックタイプだと、操作パネルが前面にあるが、このようなタイプだとコントローラーの横に置き、出力レベルをボリュームダイヤルで調整できるので、DJ時に使い勝手が良い。

欠点は、ちょっと大きい、そしてちょっと重いところかな…

DJソフトでの設定方法

オーディオインターフェースを導入したら、DJソフトでのオーディオ設定画面にて、このように設定すると良い。
利用者の多いrekordboxTRAKTOR PROの場合を掲載する。

rekordbox

ファイル>環境設定>オーディオタブ から、「オーディオ」をオーディオインターフェイスのもの(WindowsだったらASIOドライバ版)にしてから、「出力チャンネル」をこのように設定する。

ヘッドホン端子とLINE OUTが逆だったらこちらを逆さまにして、上から 3・4・1・2の順に設定すればOK。

TRAKTOR PRO

File>Audio Setup>Audio Setup から、「Audio Device」をオーディオインターフェイスのもの(WindowsだったらASIOドライバ版)にする。
File>Audio Setup>Output Routing から、「Output Monitor」でヘッドホンOUTのチャンネル、「Output Master」でメインのLINE OUTのチャンネルをアサインする。

ヘッドホン端子とLINE OUTが逆だったらここで入れ替えれば良い。

パソコン側のUSB端子について

AUDIENT iD mkIIシリーズを使うのであれば、パソコン側にUSB-C形状でのUSB3以上の端子が必要だ。

MacBook Proだと2つのUSB4/Thunderbolt端子があるので問題なし。
MacBook AirのようにUSB4端子が2つあっても片方がUSB-CのPDによる電源供給で埋まって実質1つしか空きの無い場合はハブを使うと増やせるけど…ハブはトラブルの元になりそうなのでおすすめできない。
Windows・Macに関わらず、パソコン側にUSB-Cの口が2つ以上付いている機種が良いだろう。

これはPanasonicのLet’s note FVシリーズの端子類。
なんだこりゃ!インターフェースのお化けだ。

なんにせよ、USB-C形状のUSB3以上の端子なら、最近のパソコンならだいたいあるだろう。

その他の方法:お店のDJミキサーにデジタル接続する

DJブースにDJMシリーズのミキサーがある場合、DJM本体にあるUSB端子(B端子)とPCを直結させ、DJMのチャンネルをDIGITALにすることで、ミキサーから音を出すこともできる。
DJミキサーをオーディオインターフェースとして使う方法だ。やってる人はあまりいないけど、試してみても良いだろう。
ただし、このやり方はDJブースの環境に依存するので、事前チェックは必ず行おう。

こちら側の準備としては、あらかじめDJMの該当ミキサーのオーディオドライバをパソコンにインストールし、DJソフト上で上記のようにLINE OUTとヘッドホンOUTを振り分けておく必要がある。

DJコントローラーでも、良い音で!

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
音質は工夫(と投資)次第で、どんどん良くできるもの。
それでは良いDJライフを!