J-POP DJのメモ vol.2 ~ジャンル編~

J-POP DJについて、何となく思っていることを書くシリーズ第2回目は、ジャンルについてです。めんどくせえぞ!

(バックナンバー)
J-POP DJのメモ vol.1 ~そもそも編~

J-POPはジャンル名ではない?

「DJのジャンルはJ-POPです」

と言うけれど、改めて考えると何を言ってるか分からないですよね。幅が広すぎます。
「洋楽のDJです」って言ってるのと同じじゃないか、で、洋楽って何よ、っていう。

J-POPにはBPM130くらいのEDM調の曲もあれば、BPM80くらいのR&Bとか、BPM150くらいの8ビートのバンドサウンド、BPM200くらいのアイドルの曲とか、色々なタイプの曲があるわけです。
なのでJ-POP DJと言っても、人によっては日本のロック中心だったりハウスアレンジもの中心だったりR&B中心だったりと、様々です。

じゃあJ-POPっていうのは何?
ということですが、それは音楽ジャンルではなく、「音楽を売るときの市場」の名前だと思います。
レコードショップや配信業者が世界中の音楽を扱ってる中で、日本の音楽はまとめてJ-POPと呼称して売っている、それだけのものかなと。

それでも何となく「J-POP DJです」と言って通じるのは、今やJ-POP DJなんてたくさんいるので、J-POP DJを見たことがある人は「ああ、ああいう感じね」とイメージできるからだと思います。
自分のジャンルを名乗る上では便利な言葉だと思います。

自分でジャンル分けをする必要がある

とはいえ、上に書いたように、J-POPにはBPM130くらいのEDM調のあるし、BPM80くらいのR&Bとか、BPM150くらいの8ビートのバンドサウンド…とか、色々なタイプの曲を、好きだから、とか、流行ってるから、という理由だけでかけていると、バラバラでつかみどころの無いDJとなってしまいます。
これはカラオケ大会?有線のBGM?みたいな感じになり、踊っている人も戸惑います。

そうならないためには、もうちょっと考えて、ちゃんと盛り上がるようにする必要があると思うんですよね。
元々ダンスミュージックではないJ-POPを、ダンスミュージックとして再解釈するのがJ-POP DJだと思っています。

ならば、こういう感じだとどうでしょうか?

DJって普通はそんなに激しくBPMが上下しないですよね。
1時間とかの枠を貰ってその中でBPMが徐々に上がっていくといった展開はあれど、130→80→200→150→110 みたいに、曲ごとにBPMが大きく変化すると、お客さんが付いていけないと思います。DJが何を考えてるのか分からなくて。(たぶん何も考えてない)

そうじゃなくて、もっとDJライクにBPMや曲調の統一感を出していく。これをJ-POPでやるのであれば、自分でジャンル分けをする必要が出てきます。

これがハウスだと、例えばBeatportとかではハウスの下のサブジャンルごとに分かれて販売されているので、とっても分かりやすいですよね。「ああ、これはディープハウスね」と向こう側が言ってくれるし、BPMだってディープハウスの標準的なところから逸脱しない。

でもJ-POPってそんなお膳立ては誰もしてくれない。アルバムに10曲が入っていると、10曲ともBPMはバラバラで、曲調もバラバラってことがほとんどですよね。
かけたいのは3曲目のアップテンポなロックと7曲目のテクノっぽい4つ打ちの曲だとしましょう。
でも、その曲が「ロックです」とか「テクノです」って、誰も言ってくれないんです。自分が勝手に「ロックだ」とか「テクノだ」って思ってるだけですよね。

なので、「自分でジャンルを分けていく作業」をしていく必要があるわけです。
面倒くさい作業ですが、これをちゃんとやるかやらないかで、DJの面白さが大きく変わると思います。

ジャンル分けの精度がモノを言う?

J-POP DJの上手い人のプレイを見ていると、時に「うわっ、ここからここに繋ぐのかよ!?しかもスムーズに!?」という驚きに出くわします。

全然違う感じのアーティスト同士の曲を、たまたま近しいBPM、近しいアレンジや雰囲気の曲があることを発見し、その二つの曲を繋いだら面白いんじゃない?と提示するのはまさにJ-POP DJの醍醐味だと思います。
しかしそれを発見するのは結構大変です。そもそも、そのアーティストがどんな曲をやっているのか?から知らないといけません。
例えば「ハウス調でちょっとラテンパーカッションが入った曲」があったら、そういうジャンルとしてマークしておく。
別のアーティストで同様のアレンジの曲を見つけたら、先にマークした曲とつないでみる。それがピッタリ合ったら最高ですね。とんちが効いているような、全然違う絵柄のパズルなのに、ピースがしっかり合うような。

こういったルーティーンを多く持っているDJが、自分にとっての面白いDJだと思うし、そうありたいと思うわけです。
しかしま~大変ですね。よくそんな面倒なことやってるなとも思います。はぁ~。

割り切りもアリ

くそ面倒なジャンル分けの話を書きましたが、そもそもそんな面倒なことをせず、かけたい曲は100曲くらいしか持ち歩かないというスタイルもアリでしょう。
かけたい曲を限定させることで全体が把握しやすくなり、その中で順番を決めていけば良いのです。

新しいことはせず、定番のものだけで回していくというのならこちらの方がフットワークが軽くて良いのではないかと思います。
90年代TKしかかけないとか、最近のアイドルのヒット曲しかかけない、みたいな。
上に書いたジャンル分け云々は、音源を家にたくさん持ってる人とか、PCDJでフルセットのライブラリを持ち歩く人向けの話です。

「和モノ」とは何か

ところで、クラブ界隈で目にする言葉として「和モノ」というジャンルがあります。

これはその名の通り邦楽のことなのですが、J-POPとは似て非なるもので、レコードでしかリリースされていないような古い音源を「これは今でも通用するグルーヴがあるよね」と「再発見」していくことが「和モノ」と括られています。
例えば1960年代にリリースされた曲があったとします。当時はクラブなんて当然無いので、クラブで映えるアレンジを狙って作られることはありません。でも実際にクラブでかけてみると、すっごく踊れるし格好いい。そういう種類の再発見です。和製レア・グルーヴなどとも言われます。

和モノDJとJ-POP DJとの違いは、そういった「時代を大きく跨いだ再発見」があるか無いか?の違いだと思います。1年前にリリースされたばかりのJ-POPの楽曲をかけて、何かを再発見、っていうのは無いでしょうし。
「これは今でも通用するグルーヴが…」みたいな曲は、今から狙って作れるものでは無いですよね。

Vol.3に続く